2009年12月14日
展覧会:『ヴァニティ・フェア ポートレイト 1913年から2008年』 Vanity Fair Portraits 1913-2008 開催:開催中~2010年1月3日まで 場所:ロイヤル・オンタリオ・美術館 ICC、トロント、カナダ Royal Ontario Museum, ICC ロイヤル・オンタリオ美術館の新館4階で開催されている『ヴァニティ・フェア ポートレイト』展を見た。展覧会のことは街中の広告で知っていたが、そこで使われていたのがマドンナやライザ・ミネリなど超有名人の写真であったため、この展覧会は有名人好きが見るものだろうと勝手に思っていたが、実際見てみたらそんなことはすっかり忘れ、いい写真がたくさん見れたと満足して帰路についた。 そもそも私はアメリカのファッション誌については、高校生のころに姉がアメリカから注文していた『ヴォーグ』を読ませてもらっていたぐらいで、『ヴァニティ・フェア』もあまりよく知らなかった。トロントに住むようになり、書店で並んでいても単なるファッション誌だろうとしかおもっていなかった。この雑誌に掲載されている著名人の写真が、これほど質の高いものだとは思わなかったのだ。展覧会でみられる作品はライザ・ミネリが真剣な表情で身なりを整える一枚、ダイアナ妃の美しく自然な笑顔、印象派の画家アングルによる『グランド・オダリスク』をそのまま女優に真似させた一枚など、どれも画面からさまざまなストーリーを感じとることができる。物思いにふける悲劇王チャップリンの素顔、死の2ヶ月前に撮影された印象派の画家マネの横顔といった時代を感じさせるものもあった。黒いレース越しにチーターのような視線を投げかける女優の一枚は息を呑むほどの美しさで、しばらく作品の前で止まってしまった。雑誌と同時代を生きていた人々にとってはその人物の活動やエピソードなどが思い浮かばれ、より一層興味深いものであるに違いない。 これらをとっている多彩な写真家についてもキャプションに説明書きがあり、興味深かった。 見ているうちに画面の作りこみ方、衣装、ポーズ、体、表情、瞬間などの多様さが気になっていった。時代によって映す対象にポーズなど多くを求める写真家と、自然さを求める写真家などの違いがあるのだろうか、裸体が劇的に増える80年代から90年代はなにか社会的な運動と関係があるのだろうか、などといった疑問も沸き、20世紀の写真の歴史を一同に垣間見られたようなお得感もあった。今後もファッション誌に掲載されていく写真をもっと注意しながら見てみようと思った。 開催されているのは恐竜、中世の騎士、浮世絵などなんでもそろっているロイヤルオンタリオ美術館の新館4階のICC。ここでは現代美術の展覧会が定期的に企画展示されているのだが、今回はその展示方法も非常に気持ち良く感じた。ダニエル・りべスキントによってデザインされた不規則に斜めに交錯する天井と壁面に囲まれた空間は、決して展示しやすい場所という印象ではなかったのだが、今回複数の大型移動式パネルを採用することによって、俄然直立した壁面が増え、平面作品がみやすくなった。このパネルは今後も活躍するようで、これからの展示も楽しみに思えた。 本展覧会は2007年2月ロンドンのポートレイトギャラリー、そしてロサンゼルス、カウンティ美術館からの巡回展だとのこと。また良質な写真を一同に楽しめるような展覧会が来てくれたらいいな、と思う。
by thinkaboutart
| 2009-12-15 11:31
| 展覧会・イベント
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