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河原温展

 ずいぶん時間は経ってしまったが、以前、豊田市美術館で「河原温」展をみた。

そのとき、わたしにとって初豊田、初河原展ということでとてもわくわくしていた。

しかし展示室に入ってすぐ、"Today"シリーズが床に墓碑のように置かれている様子を見て、大変な違和感を覚えた。

"Today"シリーズを、足元に置いて視線を下げる、隣の作品にぶつからないように気をつけながら鑑賞すると、あの作品群が持つ神秘的な面を汚しているように感じた。
また、床一面に多数の作品を並置することで、数字の羅列にとどまってしまい、歩きながら作品を自分の目線にそってたどっていくうちに、数字の意味を考えさせるあのシリーズのよさが薄れるように思えた。展示室で眺めていても、一見してその展示意図がわからず、もどってからも「?」だった。


 河原は文字で表される日付を作品に描き、その日の意味を見るものに問いかける。
年、月、日の文字だけが描かれているので、はじめその日付の意味はわからなかった。
なにか事件のあった日なのか、歴史的な日なのかと考えた。しかしわからないのだが、なにか惹かれる、忘れられない。
誰が見ても年月日だとわかる。
でもなんの日なのか、わからない。
その繰り返し。
美術館などで見かけたときは「あ、ここにもいたのね」と親しみさえ感じる。
それが彼の制作意図であり、魅力だろうか。

 解説を読み、初めてそれが河原自身が作品を制作した日付を描いたものであることがわかった。
また、豊田市美のチラシにあそこに置かれていたのが「各年の日曜日に描かれたもの」であったことがわかった。

河原はいつも日曜日に描くのかだろうか?

それとも日曜日に描かれたものだけをあそこに並べたのだろうか。

 チラシにある「日常を描く行為」。
気になるキーワード。
気になるアーティストである。

 河原温、1933年愛知県刈谷市生まれ。

 1998年1月、東京都現代美術館、河原温展《全体と部分1964-1995》
by thinkaboutart | 2005-06-01 10:46 | 展覧会・イベント


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